第371回例会報告

高分子分析研究懇談会第371回例会が、3月5日(水)、東京・五反田、「ゆうぽうと」で開催された。あいにくの雪で足元が良くない日ではあったが、多数の方の参加していただき、講演2件、ワークショップ2件において活発な討議を行うことができた。
 衣笠委員長より開会の挨拶があり、運営委員長として2年間の統括、新委員長の紹介があった。委員長の、「さらなる幅広い活動を望む」の言葉が印象的であった。
さて、一件目のご講演は、福井県立大学・教授の片野 肇先生より、「カチオン性ポリマーを例とした酸化還元不活性な薬剤の電気分析化学」であった。界面化学を中心に、酸化還元不活性な薬剤であっても、溶液中イオンとして存在する場合、イオン移動ボルタンメトリーと呼ばれる油|水界面の電位差を関数として同界面を横切るイオン移動反応を電流として観察する電気分析法の対象となる可能性があり、また、酵素触媒電流を与える系に注目する薬剤を添加し、その電流変化を観察することで、酵素に対する影響が評価できる。多くの薬剤が同法の対象となるが、最後に、カチオン性ポリマーを選択すると、負電荷を帯びた酵素表面に結合して、沈殿せずに酵素安定化(失活抑制)や負電荷を帯びた基質との反応速度増加効果を示すことは注目すべき結果であった。「いつか役に立つ」と仰っていたが基礎科学の重要性が伝わる熱の入ったご講演であった。
次に、ワークショップとして旭化成(株) の山端 祐介先生に「MALDI-TOF-MS による高分子材料中の添加剤の直接分析」をご紹介いただいたMALDI法を用いて材料を評価する事が近年注目されており、まさにタイムリーな内容であった。特に高分子材料中の添加剤の表面分布や深さ方向の分布をピーク強度から精密に定量する解析技術は目を見張った。質問も相次ぎ本格的な討論となった。

続いて、ワークショップ2件目として、日本化薬(株)の 星 貴洋先生に、「TEOS分解GC/MS法を中心としたシリコーン化合物の構造分析」をご紹介いただいた。イントロの会社紹介も盛り上がりを見せた。シリコーン樹脂の主骨格の構造情報を得る手法として、テトラエトキシシラン(TEOS)分解GC/MS法を解説していただいた。EI、CI、MALDI等のイオン化法やシリル化等の前処理方法の検討し、スペクトルを深く読むことで、シリコーン化合物の中でも置換基に特徴がある界面活性剤など添加剤用途の化合物特定に有用であることが分かった。

最後の、帝人(株)の菅沼 こと先生に「ポリ乳酸の立体規則性解析」をご講演いただいた。菅沼先生は、第370回例会でご発表いただいた菅沼先生(豊田研究所)とご姉弟であり、本懇談会への貢献度に感謝した。さて、ポリ乳酸(PLA)の立体規則性に関する情報を得るため、NMRによる詳細な解析と、溶媒効果を活用した検討を解説いただいた。計算と、実験の両面からアプローチし、量子化学的計算によって、コンフォメーションエネルギーとNMR化学シフトを計算し、計算結果と実測結果を比較することで、化学シフトとコンフォメーションと関係を明らかにした点が興味深かった。

 2013年度は、通常例会4回、討論会1回、技術講習会2回、夏季合宿1回を開催することができた。2014年度最初の例会が東京(4/21)で、また、夏季合宿(7/4-5:伊東)、討論会(10/15-16:名古屋)が開催予定である。本懇談会にとって更なる飛躍に年となるよう運営委員一同精進していく所存であることを結びとさせていただく。
(文責:福井県立大学 平 修)



All Rights Reserved, Copyright (c) 2003, THE JAPAN SOCIETY FOR ANALYTICAL CHEMISTRY