第365回例会報告

 高分子分析研究懇談会の第365回例会が、12月10日(月)に東京五反田の「ゆうぽうと」にて開催された。通常とは異なり、講演4件およびワークショップ2件が行われ、いずれも活発な議論がなされた。なお、参加者は60名であった。

 1件目は根本直先生(産総研)から「NMRを利用した包括的メタボローム分析」と題する講演が行われた。多変量解析による非標的分析を行い、思いもよらない注目すべき因子をあぶりだすことを期待して、ノンターゲットNMR−MP(メタボリックプロファイル)と呼ばれる手法を用いて、代謝物のNMRスペクトルについて多変量解析を行った事例が紹介された。事例ではラットの尿、新生児の尿、唾液について検討を行った結果、解析結果と症例との相関が得られ事例が報告された。根本先生は解析に際して、変数が多いほうが良いわけではなく、多すぎると識別器が劣化するため、最適値はデータの質と量によって決まること、従って良質なデータの取得こそが重要と強調された。

 その後、1件目のワークショップで北瀬恵氏(豊田合成)から「熱分解GC/MSに多変量解析を適用したEPDMの共重合組成分析」と題する講演が行われ、エチレンプロピレンジエン共重合体組成分析法として、熱分解GC/MSに多変量解析を適用した事例が紹介された。主成分回帰分析と呼ばれる手法を使用した結果、共重合組成の高精度な予測式を作成でき、検証値についてもNMR分析値とよく一致した結果が得られており、まだ少ない多変量解析の高分子材料への良好な適用例と思われた。1件目の根本先生の講演と合わせて、今後多変量解析を検討している会員にとっては、検討過程が特に参考になったと思われる。

 続いて、2件目の講演は加藤晴久先生(産総研)から「ナノ有害性評価における液中特性解析」と題する講演が行われ、ナノ規制に対するナノリスク評価への取り組みが紹介された。加藤先生はインビトロ毒性評価の手法を検討されており、簡易的な方法で、生体適合性、栄養分枯渇しないで安定に分散されているように調整することが安全性評価方法としてまず重要とされ、分散液の調整法から検討された事例を紹介された。特にリスクがまだ明らかとなっていないナノ材料のために、このような基礎的なリスク評価の確立が今後益々重要になると考えさせられた。

 続いて、2件目のワークショップでは鈴木大輔氏(フジクラ)から「P&T-GC/MSによる高分子材料中過酸化物架橋剤および加硫促進剤の分析」と題する講演が行われ、ポリオレフィンの架橋剤や加硫促進剤についてP&T-GCMSによる分析検討を行った事例が紹介された。溶媒抽出と同等の結果でしかも分析時間を大幅に短縮できたとのことで、分析の効率化はどの企業にとっても重要な課題であると認識させられた。

 続いて3件目の講演では中村洋先生(京都大学)から「ポリマクロモノマーのキャラクタリゼーション」と題する講演が行われた。側鎖間隔が一定の櫛形構造で側鎖密度が非常に高い特徴を持つポリマクロモノマーを合成され、その側鎖重合度が高くなると剛直性も増すことを光散乱法などの手法により明らかにされた。さらに側鎖にスルホン化により電荷を供与することによって側鎖間の反発でより硬くなるのではないかと考えられ、実際にスルホン化前より回転半径と剛直性パラメータが増大し、伸びきり鎖状態になっている結果を紹介された

 最後の4件目の講演では熊木治郎先生(山形大)から「合成高分子の高分解能原子間力顕微鏡観察」と題する講演が行われた。LB法とAFMの組み合わせは構造を分子レベルで検討するのに適切と考え、LB法で2次元結晶を作成し、その融点が通常の結晶と比較して低下する現象を紹介された。it-PMMAについて結晶を観察され、it-PMMAは吸着水によってレプテーション運動をする現象を視覚的に確認できたのは驚きであった。また、1分子のit-PMMAが結晶化するのをオリゴマーPMMAの中で観察され、結晶の大きさは分子量によってあまり変化せず、分子鎖の末端が優先的に結晶化することを明らかにされた。このように視覚的に示されると非常に説得力のある結果であり、AFMが今後高分子の表面解析に大きな役割を果たすことを期待させる内容であった。

 例会終了後には交流会が行なわれ、講師の方々を囲んで和気藹々とした雰囲気の中で会員相互の親交を深めた。
 

(DIC株式会社 仲村仁浩)



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