第361回例会報告

 高分子分析研究懇談会第361回例会が2月7日(火)、東京簡易保険会館「ゆうぽうと」で開催された。講演2題とワークショップ2題からなる計4件の発表と、45名の参加者による活発な質疑応答が行われた。

 講演の1件目は、黒田真一氏(群馬大学大学院)による「高分子の劣化メカニズムとその解析手法」と題した内容であった。ポリオレフィン、PSを例に劣化過程である二重結合の生成、酸化機構およびこれら劣化反応を防ぐフェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤の作用機構が説明された。さらにPCの光劣化について、ラジカルの発生から光フリース転移による着色物質生成反応、またこれら光劣化を防ぐベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の作用機構が示された。以上の解説に続いて劣化状態を観測する手法が紹介された。分子量分布測定に基づく主鎖切断と架橋反応、IRおよびXPSによる化学構造変化、UVスペクトルおよびケイ光・リン光測定による黄変化について実測例が示された。これらの研究結果は高分子材料の大命題である寿命予測へ繋がる貴重な成果だと感じられた。

 ワークショップの1件目は、光岡拓哉氏(豊田中央研究所)による「時分割XAFS等を用いた硫黄架橋系水素化NBRの架橋状態解析」と題した内容であった。代表的な高耐油性ゴムである水素化NBR(HNBR)の硫黄架橋配合系を対象に、架橋構造形成に伴うナノ物性・構造変化について各種手法を用いて総合的に解析した結果が紹介された。架橋反応に伴うZnO由来Zn原子周辺の結合状態を放射光(Spring-8)を用いた時分割XAFS測定で評価した。また、架橋構造形成に伴う分子配向の異方性評価をXRD測定で、硫黄が関与する結合の分布評価を軟X線顕微鏡観察で、ゴムの力学物性(弾性率、粘着力)分布をSPMのPeak Forceモードを用いて観察した結果が示された。これらより、硫黄添加量およびカーボンブラックの表面活性がゴムの架橋反応に影響している可能性が示唆された。

 ワークショップの2件目は、中島陽司氏(旭硝子)による「親フッ素-親油-親水バランス評価に基づいたフッ素系ポリマーのLC分析法開発」と題した内容であった。ポリマーのLC分析において、フッ素系溶媒のLC特性は従来法である親油-親水性指標では評価できていない。そこで親フッ素性も考慮に入れた親フッ素-親油-親水(FLH)バランス評価法が開発された。開発された手法であるODSカラムとフッ素修飾カラムを用いた2段階のHPLCによるlogPOW-logPPT(Perfluorodimethylcyclohexane/Toluene分配係数)測定法について実測例が示された。フルオロアクリレート/メチルメタクリレートブロックポリマーの測定結果から、移動相のFLHバランス値が固定相と試料のFLHバランス値と異なるほど、試料/固定相間エンタルピー的相互作用が強くなる傾向が認められた。

 講演の2件目は、小名俊博氏(九州大学大学院)による「生細胞内ミトコンドリアの光応答判定技術による抗がん成分薬効評価システムの創製」と題した内容であった。ミトコンドリアとは、食べ物から水素を呼吸から酸素を供給されて発電する燃料電池であるという分り易いイントロに続いて、その分極状態の変化率が細胞の最終状態の定量的なカギであることが解説された。その分極状態の変化率を検出する方法として新技術である高精度表面プラズモン共鳴法(HP-SPR)が紹介された。市販SPRの精度を100万倍にすることで感度不足が解消され本システムが実現できたことが解説された。メーカー仕様性能が必ずしも技術的限界ではないことを実感する内容であった。本格的な実用化には大量測定できる装置改良が必要とのことであったが、一日も早い実現を期待したい。

 いずれの講演についても、質疑応答時間では活発な議論が展開され、有意義な例会となった。

(UBE科学分析センター 宮内康次)




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