第359回例会報告

 高分子分析研究懇談会の第359回例会が、9月5日に五反田の「ゆうぽうと」で開催された。紀伊半島に甚大な被害をもたらした台風12号の影響による悪天候ではあったものの、無事に開催された。例会では講演2件およびワークショップ2件が行われ、いずれも活発な質疑応答がなされた。(参加者:40名)

 最初に、荻野賢司先生(東京農工大学大学院)より「高速液体クロマトグラフィーを利用した共重合体の組成分別」と題した講演が行われた。カラム充填剤であるポリマーゲルを独自に合成し、ポリマーゲルと溶媒グラジエントによる溶離液組成との組み合わせによって、分子量の影響が小さい分離条件を検討した結果が報告された。また、三元共重合体の分離では、極性の異なる2組のカラム充填剤を用いて、複雑な三元共重合体を組成ごとに分離分別した事例が報告された。CO2を溶離液としたSFCによる分離では、温度を低下させる方向での温度グラジエントによって、組成ごとに分離分別を行った事例が報告された。

 ワークショップの1件目には、仲村仁浩氏(DIC(株))より「高周波加熱装置による樹脂の分析事例」と題した講演が行われた。高周波加熱装置を用いることによって、フェニルイソシアネート分解により脂肪族ポリエステル系ポリウレタン樹脂のウレタン結合部分を選択的に切断・誘導体化させ、ソフトセグメント部分の分子量測定をSECおよびMALDI-MSにて行った事例が報告された。また、ガラス封管を必要としないキャップ式ガラス試料管での高周波加熱法は、安全に取り扱うことができ、かつ大量に試料を熱処理できることから、熱分解-NMRといった新しい分析方法を行うための加熱手段として利用した事例が報告された。

 続いて、ワークショップの2件目には、落合周吉氏(エス・ティ・ジャパン)により「モニタリングツールとしてのラマン分光法−DSC-Ramanを中心として−」と題した講演が行われた。ラマン分光法の大きな特徴である非接触,非破壊での測定が可能であることを利用し、DSCチャンバーにラマンのプローブを取り付けることによって、DSC測定における熱挙動の変化とラマン分光法による化学構造の変化に関する情報を組みあわせることができる。DSC測定によるポリスチレンの結晶構造の変化とラマン分光法による化学構造の変化と関連付けた事例が報告された。また、粉体試料を混合撹拌する時のモニタリングツールとしてラマン分光法を適用し、混合の経過モニターおよび終点の検出を行った事例も報告された。非接触,非破壊であり、水,ガラスの影響をあまり受けないラマン分光法が、今後、合成反応や製造工程でのモニタリングツールとして応用されていくのではないかと期待される講演であった。

 最後に、講演の2件目として、佐藤幸司氏(旭化成(株))より「合成高分子の構造解析における熱分解GC×GC/MS法の活用と熱分解生成物の保持時間予測への取り組み」と題した講演が行われた。熱分解GC×GC/MSを適用することによって、通常の熱分解GC/MSでは分離・検出が困難であった熱分解生成物についても構造解析が可能となる。GC×GCでは、無極性カラムで沸点による分離を行った成分を、さらに高極性カラムで極性による分離を行うことによって、熱分解生成物の分離を向上させるとともに、極性に関する情報を付与することで同定の精度も向上する。通常の熱分解GC/MSでは検出されにくいABSのブタジエンオリゴマー群が、熱分解GC×GC/MSではスポット群として検出された事例が紹介された。また、合成樹脂を熱分解した時に発生する熱分解生成物の種々の異性体を識別する手段として、予想される各異性体の凝集エネルギーと双極子モーメントを計算しその両者の分布から、GC×GC/MSでの各異性体の保持時間を予測する取り組みも報告された。PPEを熱分解した際に発生する2量体のピーク群について、クロマトグラムの検出パターンと凝集エネルギーと双極子モーメントの分布から、検出成分の同定を行った事例が報告された。

住ベリサーチ(株) 平池 修





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