第358回例会報告

 高分子分析研究懇談会第358回例会(夏期合宿)が、7月15日・16日の2日間、滋賀県守山市のラフォーレ琵琶湖にて開催された。東日本大震災の影響による参加者減少も予想された中、昨年より11名多い50名の参加者の下、2日間にわたり5件の講演と、3テーマの分科会によるグループディスカッションが行われた。

 初日13時30分から、本会運営委員長である大関博氏(旭化成)の挨拶で合宿が開始された。最初は、浅野敦志氏(防衛大学校)による「固体NMR法から観た結晶性ポリマーブレンドとゴム材料」の講演が行われた。

 前半は、固体NMRによる結晶化度や結晶相の大きさなどの測定に関する内容であった。NMRスペクトルを、結晶相、アモルファス相、さらにその界面に分離する手法によってそれぞれの割合を算出し、結晶化度がXRDによる観測結果と良く一致することが示された。また天然ゴムのMAS回転下における変形とNMRスペクトルの変化については、非常に興味深い内容であった。

 2番目は、小林元康氏(九州大学)による「中性子反射率測定による高分子電解質ブラシの水界面構造解析」の講演が行われた。講演の冒頭で、高分子電解質ブラシのデモ映像が流された。ちょうど瞬間接着剤のCMにあるように、水をかけて圧着したブラシはダンベルを持ち上げられるほどの接着力をもつが、塩水をかけるだけで容易に剥がれるという、面白い特性を示す映像であった。このポリマーブラシを、中性子反射率測定によって分析されているが、現在震災の影響で、実験が停止しているとのことであった。

 初日最後は、「HPLCを用いた高分子の精密キャラクタリゼーション −環状高分子を例にして−」というタイトルで、高野敦志氏(名古屋大学)による講演が行われた。環状高分子をLCCCによって分析するという内容であった。LCCCの研究に当たり、SECの分離機構に深く踏み込んだ研究が紹介された。多くの研究者が素朴に抱いていたものの、あまり追求されて来なかった部分の研究で大変面白いものであった。LCCCはコンディショニングなどにおいて非常にクリティカルであるが、環状ポリマーのようにSECやICで分離・分析しにくい構造において、高いパフォーマンスを示すことがわかった。

 夕食後、3つの分科会「A:NMR分析」「B:表面分析」「C:分離分析(液体クロマトグラフィー)」に分かれて、グループディスカッションが行われた。それぞれの分科会参加者は、15名、14名、17名とほぼ均等に分かれ、約2時間にわたって活発な議論が展開された。
分科会終了後、場所を変えて立食形式の交流会が開催された。交流会とは言え学術的・技術的議論が各所で交わされ、一時的な〆の後、いくつかのグループに分かれて深夜まで2次会が行われた。

 翌朝、眠い目を擦りながらの朝食の後、セッションが開始された。最初は、「電子顕微鏡による高分子微細構造解析」というタイトルで堀内伸氏(産総研)によって講演が行われた。

 電子顕微鏡は主に二次電子、反射電子、あるいは透過電子による形態観察に用いられている。しかしこれらの電子、あるいは電子照射によって放出される光などは、試料の化学的特性を反映しており、それを分光することで、化学的性質をマッピングする研究であった。分光することによるコントラスト低下を補う手法や試料作製法の開発、装置改良などが照会されたが、あまり表には出ない多くの工夫と苦労が秘められているように思われた。最後に高分子界面のナノフラクトグラフィについて紹介されたが、今後より微細な化学的性質によるイメージングが求められるのは、必然であろう。

 最後の講演は、グン・チェンピン氏(北海道大学)による「可逆的犠牲結合の導入による自己修復能を持つ高靭性ゲルの創製」の講演が行われた。「人工の軟骨ができるようなタフなゲルをいかにつくるか?」という、社会的要求が明確な研究テーマであった。粘性や靭性などの機械的特性を分子レベルで解釈し、そこからラメラ構造を導入するに至る研究の流れが丁寧に紹介された。特にマクロな機械的性質と高分子の分子レベルの挙動については、非常に解りやすく説明された。近い将来、より機能的な人工軟骨として実用されることが期待される。

 すべての講演終了後、前夜に行われた分科会について、それぞれのリーダーから報告された。各テーマに沿った内容のみならず、タイトルに捕らわれない議論が展開され、参加者にとって非常に有意義な分科会であったと思われる。最後に大関博委員長の挨拶で2日間の日程をすべて終了し、記念撮影・昼食会を経て解散となった。

 東日本大震災の影響は全国に及んでおり、講演やディスカッションの中で研究への影響が何度も話題として挙げられた。そのような折に、北海道から九州に至るまで、全国からお集まりいただいた皆様に感謝したい。

日本電子(株) 佐藤崇文
 

 

 

 





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