第354回例会報告


 高分子分析研究懇談会の第354回例会が、10月7日に五反田の「ゆうぽうと」で開催された。例会では講演2件およびワークショップ2件が行われ、いずれも活発な質疑応答がなされた。
 講演の1件目は、石丸伊知一郎先生(香川大学工学部)より「結像型2次元フーリエ分光法による分光断層像計測技術」と題して、結像型2次元フーリエ分光法を、細胞、皮膚、眼球等の生体材料に適用した研究例の報告があった。可視光線、赤外線は従来の医用計測で使用されているX線と比べて人に安全な光であり、また赤外線の吸収により成分も分析可能である。よって任意の点における分光吸収率の情報を分光断層像に合わせることで、形態と成分の同時計測が可能である。結像型2次元フーリエ分光法は、測定面を合焦面内に深さを限定して2次元フーリエ分光イメージングを実施するため、3次元立体分光イメージング、断層像計測等が可能である。本技術により、大きさ20μm程度の細胞の分光断層像が得られている。
 ワークショップの1件目には、池田野延之氏(住ベリサーチ(株))より「固体NMRを利用したフェノール樹脂の硬化構造解析」と題して、ネットワークポリマーの化学構造解析とその架橋状態の定量的な評価を実施した例が報告された。フェノール樹脂の理想的な硬化反応により生じる完全硬化物のメチレン基とフェノール核の結合モル比は1.5である。今回、固体NMRスペクトルにてフェノール核及びメチレン基に対応する面積比を求めることで、硬化度合いを見積もることが可能であることが報告された。種々の加熱硬化条件及び原料ヘキサメチレンテトラミン量にて硬化させたフェノール樹脂を分析することで、実際の硬化反応は、本評価法によると、ある一定の結合モル比、即ち一定のネットワーク構造を形成すると、それ以上の核間メチレンの導入は抑制されると推定されるとのことであった。
 ワークショップの2件目は、矢部政実氏(関西ペイント(株))により「各種耐候性試験による塗膜の劣化挙動の解析」と題して、塗膜における屋外バクロ試験と各種促進耐候性試験の詳細と劣化形態の比較について報告された。車両用塗膜について、各試験を実施したものを、顕微反射法(IRスペクトル)による塗膜表面の劣化の解析、及び走査型電子顕微鏡(SEM)による塗膜表面の形態観察を実施している。屋外曝露試験では、表面に巣穴状の欠陥が成長するが、促進試験では、劣化により膜全体が肉ヤセする。また屋外曝露試験と比較し各促進試験は、光分解や加水分解反応が強いという、両者の試験は劣化のモードが異なるということが報告された。各促進試験条件下における光線の波長分布は、太陽光と異なる部分もあり、塗膜の促進試験は、使用環境等各条件に適した試験法が必要であるとのことであった。
 最後に講演の2件目として、宮前孝行氏(産業技術総合研究所ナノシステム研究部門)より「高分子表面・界面の先端計測手法としての和周波発生(SFG)分光」と題した講演が行われた。和周波発生分光法とは、二つの周波数の異なる光(可視光と赤外光)を試料に入射することで起こる「二次の非線形光学効果」を利用した界面敏感な分光法であり、界面選択的、超高真空や試料の導電性を必要としない、固体表面だけでなく、液体/固体界面や液体表面・界面等も光が界面に到達すれば測定可能、等の特徴がある。温度官能性ゲルであるN-イソプロピルアクリルアミドのグラフトポリマーを、空気中および下限臨界溶液温度上下の重水中でSFG分析を行うことで、溶解現象を詳細に解析した事例他、SFG分光法の特徴を活かした様々な研究例が紹介され、今後の同分析法の更なる発展が期待される内容であった。

潟uリジストン 百瀬直子




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