第353回例会報告

 高分子分析研究懇談会第353回例会(夏期合宿)が,7月9日・10日の2日間,静岡県伊豆市のラフォーレ修善寺にて開催された。最終的に39名の参加者を得て,5件の講演と分科会で活発な意見交換が行われた。本研究懇談会の運営委員長,大関博氏(旭化成)による開会挨拶の後,第1セッションがスタートした。
 最初は川崎英也氏(関西大学)より「無機ナノ粒子・ナノ構造表面をイオン化支援剤に用いたレーザー脱離イオン化質量分析法」の講演が行われた。ソフトなイオン化法の一つであり,マトリックス由来のノイズの少ない表面支援レーザー脱離イオン化質量分析法(SALDI-MS)の紹介とSALDIに有用な白金ナノ粒子・ナノフラワー構造の特徴,及び合成高分子や添加剤への応用など,興味深い研究事例が紹介された。
 次に「ナノ触診技術としての原子間力顕微鏡とその高分子材料への応用」と題する講演が中嶋健氏(東北大学)から行われた。高分子表面の解析について,原子間力顕微鏡(AFM)を用いた場合,硬い部位と柔らかい部位を針で押した凹凸像を見ており,ナノパルペーション法の紹介,ヤング率,粘弾性仕事像等のフォースマッピング,コンタクトモード,タッピングモードの力の説明,高分子一本鎖末端に感知するナノフィッシング解析の紹介があった。
初日セッションの最後は櫻井和朗氏(北九州市立大学)から「放射光X線小角散乱とGPC/MALSを用いたβ-1,3-グルカン/DNA複合体の分子形状の決定」と題する講演が行われた。多糖シゾフィランを中心とする多糖類と核酸との高分子複合体,高分子溶液物性,計算科学で得られた結果の検証,核酸医薬のDrug Delivery System(DDS)への応用など興味深い紹介があった。
 夕食後,講師の先生を中心に「A:質量分析」「B:表面分析・電顕観察」「C:高次構造解析」の3分科会に分かれて2時間弱に渡って熱心な議論が交わされた。分科会の後,夏合宿恒例の交流会が催された。交流会場での話が尽きず,場所を変えての二次会は夜が更けるまで続けられた。
例会2日目は早出広司氏(東京農工大)による「自己血糖診断ビジネス 〜現状と展望〜」と題する講演で幕を開けた。グルコースセンサーの原理と歴史,自己血糖測定の主要メーカーとフラッグシップ,連続血糖診断とインシュリンポンプとマルトース問題などの今後の展望について幅広く紹介された。
 続いて江川淳一郎氏(コーセー)より「水を科学することと化粧品の素材・製剤の開発について」の講演が行われた。皮膚の生体反応における水のコントロールことの重要性の紹介と水のカプセル化などの素材−製剤開発の報告があった。本例会の締めくくりとして,初日夜に行われた分科会の報告が各分科会のコーディネーターから行われた。3つの分科会とも密度の高い議論が行われたことが伺われた。
 最後に本例会(夏期合宿)の企画運営に携わった一人として参加者の皆様のご協力に感謝するとともに、一緒に企画運営に当られた香川信之氏(東ソー分析センター),宮田一司氏(日立マクセル)の尽力にお礼を申し上げたい。

                            住友スリーエム(株) 柏原督弘

    



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