第351回例会報告

 高分子分析研究懇談会第351回例会が2月4日、五反田「ゆうぽうと」にて開催された。講演2件、ワークショップ2件があり、活発な質疑応答がなされた。参加者は40名であった。
 最初に、川原健吾氏(旭硝子株式会社中央研究所)から「クロマトグラフィー法および振動分光法を用いた燃料電池用電解質膜の劣化に関する解析」と題して、電解質膜の劣化機構およびPtバンドと電解質膜劣化の関係についての講演があった。電解質膜のパーフルオロスルホン酸ポリマーに対し、従来の試験法の欠点を克服する新劣化加速試験法を考案した。120℃のチャンバー内に置いた膜を低湿度の過酸化水素蒸気流にさらし、生成したフッ素イオンの定量、劣化膜の重量ロス、分子量、カルボキシル基の量を分析した。不安定ポリマー末端からのunzipping反応とともに主鎖切断も起き、逐次に分解反応が進むことが明らかとなった。Ptバンドと劣化との因果関係については、IRイメージングによりカルボキシル基はアノード付近により多く分布しており、カソード付近のPtバンドの位置とは異なっていた。洗浄化したPt粒子からはヒドロキシラジカルを生成しないこと、膜に分散させてOCV運転しても膜劣化が見られず分解を抑制することなどから、Pt粒子は膜劣化に寄与しないと結論した。
 ワークショップ1件目は、佃由美子氏((株)三菱化学アナリテック)から「硫酸液液抽出を前処理とするポリマー中のHALSの選択的・包括的分析法の開発」と題して講演があった。ヒンダードアミン光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizer: HALS)はアミンのタイプや分子量の違いにより多様な種類があること、吸着しやすいことから通常の添加剤と比べて分析を難しくしている。HALS類全体に対して選択性があり、かつ汎用的な装置で可能な分析法の開発を検討した。具体的には、ポリマーを溶解したデカリン溶液から、希硫酸によりHALSを選択的に抽出した後、この希硫酸層を中和、続いてクロロホルム層へHALSを移し、FT-IRなどを用いて定性した。NH型およびNCH3型の簡便・確実な分析法として実用可能であると分かった。NOR型およびNX型でも、比較的塩基性の高いものには適用可能と考えられる。
 ワークショップ2件目は、本多貴之氏(明治大学研究・知財戦略機構)から「天然高分子材料“漆”の分析」と題して講演があった。漆製品は類似した化学構造をもつ成分の混合体である上に、強固な3次元網目構造を形成するため、詳細に研究例が少なかった。演者らは遺物や文化財から得られるごく微量の試料を高精度に分析するための手法として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)誘導体化熱分解−ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)を用いた分析法を開発してきた。TMAH誘導体化は漆のカテコール成分の分析に有効であることが確認されたが、手順が煩雑で、誘導体化の精度がよくないという問題があった。TMAHを含浸させたガラス繊維ろ紙を用いて誘導体化熱分解を行うことにより、簡便かつ再現性の高い結果が得られることを実証した。なお、ワークショップの2件は第14回高分子分析討論会において審査員賞を受賞された発表である。
 最後に小川俊夫氏(金沢工業大学)から「プラスチックフィルムの表面処理の現状と処理状態の解析」と題して、表面処理手法の概要、様々な化学的・物理的表面処理法の研究例についての講演があった。プラスチックフィルムは積層で使われることが多く、金属との接着例が増加している。ポリオレフィンなどの極性の小さいポリマーでは表面処理なしに接着が起こらない。主な物理的表面処理法の中でコロナ処理、低温プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、火炎処理はいずれもプラズマ状態を出現させて、空気中なら表面の酸化反応を促進し、酸素含有官能基が付与されることにより表面張力が増加し、接着力が改善される。含酸素官能基生成量の傾向はXPSのC1sピークや化学修飾してフッ素ピークにより定量できる。最も普及しているコロナ処理を始めとして、各技術の原理、装置、研究例の紹介があった。それぞれの技術には一長一短があり、ぬれ性の向上だけで方法の優位性を判断することなく、実用性にも配慮することが望まれる。
                (株)住化分析センター 近藤晃弘





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