第350回例会報告

 高分子分析研究懇談会第350回例会が12月3日、五反田「ゆうぽうと」にて開催された。講演2件、ワークショップ2件があり、活発な質疑応答がなされた。参加者は42名であった。
 最初に、寶崎達也氏(リケンテクノス株式会社分析センター)から「液体クロマトグラフィによる高分子材料の分析」と題して、高分子材料中の可塑剤の迅速定性・定量、ポリエステル樹脂のSEC分析、架橋・高分子量成分の評価、以上の内容で講演があった。高分子材料では、主成分のポリマーに添加剤が配合される場合が多い。添加剤については規制の対象になっている物質も多く、これらの分析の重要性が増している。添加剤の分析には通常GC/MS等が使用されるが、可塑剤は添加量が多いためLCでの分析を検討。その結果、簡便で迅速な可塑剤の定性・定量法を確立した。また、SECを用いることで高分子可塑剤の分析も可能となった。PETやPBTの分析では、SECでの分析例が紹介された。試料をHFIPに溶解、この溶液を分析に用いることにより溶離液に高価なHFIPを用いることなくクロロホルムを溶離液とすることでSECで分析できることが紹介された。耐候試験後のオレフィン系材料の分析では、架橋により高分子量化した成分が生成してくる例が示された。
 ワークショップ1件目は、松田敦子氏(コニカミノルタテクノロジーセンター)から「熱分析及び局所分析を用いたセルロースアセテートフィルムの解析」と題して講演があった。セルロースアセテートフィルムの評価に際しては、バルク分析用には示差走査熱量計、動的粘弾性等が、局所分析用には走査型プローブ顕微鏡(SPM)、ナノサーマルアナライザー(nano-TA)、ナノインデンテーションが使用される。光学特性や電気特性などの機能を有する高分子を詳細に分析するには、局所分析手法用いて可視化する方法が有効であるとの紹介があった。また、白濁したフィルムの分析例では、SPMやnano-TAを用いて分析した結果、プレス時に基材のポリマー鎖が伸びきって網目状になったことが白濁の原因であることが紹介された。
 ワークショップ2件目は、飯塚友美子氏(株式会社住化分析センター)から「熱分析手法による高分子材料の熱履歴評価および寿命予測評価法について」と題して講演があった。熱履歴推定では、示差走査熱量測定(DSC)のガラス転移温度付近で観測されるエンタルピー緩和ピークが指標となるが、従来のDSCでは情報の入手が困難であった。温度変調型示差走査熱量測定法(MDSC)を使用することで必要な情報の入手が可能となり、本法でのPETやポリスチレンの分析例が紹介された。また、熱重量測定による高分子材料の寿命予測を小澤法を用いて検討。ポリメタクリル酸メチルについては小澤法で寿命予測が可能と考えているが、測定雰囲気など条件の違いで実際との乖離が大きくなる可能性がある。
 最後に、久松 眞氏(三重大学生物資源学研究科)から「多糖の構造と戦略」と題して、澱粉、β-1,3-グルカン、植物の細胞壁、環境及びバイオエタノール、以上の内容で講演があった。澱粉は食料となり、その代表は米である。米は種類により含まれる澱粉の構造や水素結合に微妙な違いがあり、この違いは食感に反映される。このため、お寿司に適したお米といったような使い分けがされる場合もある。β-1,3-グルカンはカビやキノコの細胞壁多糖の主成分で、免疫力の向上に効果を示したり抗腫瘍性などの生理活性を有するものがある。環境問題に関連して、バイオエタノールが注目されている。木材や稲ワラなどは食料と競合しないバイオマスといわれバイオエタノールの原料となるが、これらは細胞壁多糖である。木材はハードバイオマスに分類され、現在の技術ではバイオエタノールを得るには不向きな原料である。環境や資源問題に関しては、バイオマスを無駄なく利用する社会の実現が必要であり、このためにはハードバイオマスを原料とした場合でも効率良くバイオエタノールを産出できる技術や酸塩耐性を持った高アルコール発酵性酵母が必要であることが示された。
                           荒川化学工業株式会社 末友 茂




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