第349回例会報告

 高分子分析研究懇談会第349回例会が9月7日,五反田「ゆうぽうと」にて開催された。講演2件,ワークショップ2件があり,活発な質疑応答がなされた。参加者は44名であった。
 最初に,東條壮男氏(ロックゲート株式会社)による「高速・高分解能の共焦点ラマンイメージングによる材料研究」の講演であった。共焦点ラマンイメージングはラマン分光と共焦点顕微鏡の技術を融合することで,回折限界の空間解像度で試料からの情報を得ることが可能である。WITec社のラマン装置(Alpha300R)はイメージングに特化した装置で共焦点ラマン分光の進化と検出器の改良(EMCCD使用)により,短時間で高精細なマッピングが可能となったとの説明がされた。試料上の数万点の完全なスペクトル測定を高速に行い,各ピークに対応した解析により相分布,結晶性,応力分布など様々な側面から空間分布イメージを生成することができ,高分子材料を始め製薬,薄膜から地球科学まで幅広い領域で利用され始めているとの報告であった。尚,WITec社の代理店はロックゲート株式会社から現在は株式会社ルシールに変更になっている。
 ワークショップ1件目は,宮田一司氏(日立マクセル株式会社分析センター)による「凍結ミクロトーム装置による,電池セパレータの観察断面試料の作成とSEMによる観察」であった。まずLi電池についての説明があった。Li電池セパレータはポリエチレンなどの疎水性微多孔性フィルムでできているため,水を用いてミクロトームに適した凍結試料を作成することは難しい。またイオンビームを用いる試料作製方法ではセパレータが溶融して微多孔質の構造観察には不向きである。そこで試料作成方法の改善を行い,SP値や融点および沸点を考慮してドデカンやオクタンなどの高沸点非極性溶媒に浸漬し,凍結後ミクロトームで切断することにより,微多孔質構造を損なうことなく断面試料作製が可能になったという報告であった。
 ワークショップ2件目は,仲山和海氏(財団法人化学物質評価研究機構)による「酸化開始温度と劣化の関係」であった。DSCによる劣化評価は試料形状の制約が殆ど無く,機械物性が測定できない製品についても適用できる利点がある。また加硫ゴムの場合にはFT-IRによる劣化評価はカーボンブラックの存在による良好なスペクトルが得られにくいためDSCによる劣化評価は有用である。DSCで劣化評価を行う場合,等温法よりも昇温法で得られる酸化開始温度(急激な酸化発熱が開始する温度)は測定値精度が高く迅速で,数mg程度の少量サンプルで測定可能であり劣化評価に適する。また,従来から劣化評価に用いられている引張試験やFT-IR法と比較して,酸化開始温度測定が複数のゴム・プラスチックの劣化評価法として有効であることを報告された。
 最後は大野浩之氏(名古屋市衛生研究所)による「ヘッドスペース法によるプラスチック製食品用器具・容器包装等の残存揮発性物質の定量分析」の講演があった。食品衛生法では,プラスチック製食品用器具・容器包装に残存する揮発性物質として,PVC中の塩化ビニル,PVDC中の塩化ビニリデン,PS中のスチレンを含む関連化合物5物質がそれぞれ規制されている。このうち,塩化ビニルと塩化ビニリデンの従前の規格試験法は,夾雑成分の影響を受けやすく定量性に問題があった。食品衛生法改正に伴い,新しい規格試験法としてヘッドスペース法による定量分析を検討した結果,従前の問題点を解消し,高感度分析法を確立したという報告であった。ポイントは試料をDMAC(ジメチルアセトアミド)に入れ室温で攪拌しながら一晩膨潤させることであるとの報告であった。またABS樹脂製食品用器具および玩具中のアクリロニトリル,1,3−ブタジエンおよびそれらの関連化合物であるプロピオニトリルと4-ビニル-1-シクロヘキセンの4種の化合物を同時測定する手法も検討され分析手法を確立されたとの報告があった。

〔株式会社日東分析センター 木村いくみ〕



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