第348回例会(夏期合宿)報告


 高分子分析研究懇談会第348回例会(夏期合宿)が,7月10日・11日の2日間,神戸市北区のスペースアルファ神戸にて開催された。5月に神戸で発生した新型インフルエンザ騒ぎで一時は開催が危ぶまれたが、最終的に47名の参加者を得て,5件の講演と分科会で活発な意見交換が行われた。
 本研究懇談会の運営委員長,大谷肇氏(名古屋工業大学)による開会挨拶の後,第1セッションがスタートした。最初の講演は矢尾育子氏(関西医科大学)より「高分子のイメージングマススペクトロメトリー」の講演が行われた。新しい分子イメージングの手法として注目されている高分子のイメージングマススペクトロメトリーの原理から、血管内のコレステロール沈着状況の観察,マウスの脳内でのin situ プロテオミクス解析事例に至る興味深い内容が紹介された。次に「たかが添加剤、されど添加剤:添加剤分析の問題点を考える」と題する講演が高山森氏(三菱化学アナリテック)から行われた。分離濃縮した添加剤をクロマト分離しスペクトル測定により定性するが,各手法の特徴を理解すると共に組み合わせが重要であることが述べられた。番外編として紹介されたプラスチックの歴史は同氏の長年の経験と知見が凝集されたもので、参加者の強い関心を集めた。初日セッションの最後は伊藤政幸氏(早稲田大学)から「高分子の酸化劣化とその温度依存性」と題する講演が行われた。前半は炭化水素の酸化の工業で構築された酸化反応機構によって高分子酸化劣化を理解し体系化した業績、後半では熱劣化の温度依存性と寿命予測について解説された。夕食後,講師の先生を中心に「A:形態観察・イメージング」「B:総合解析」「C:劣化・変成・安定化」の3分科会に分かれて2時間弱に渡って熱心な議論が交わされた。分科会の後,夏合宿恒例の懇親会が催された。懇親会場での一次会では話が尽きず、場所を変えての二次会、三次会は夜が更けるまで続けられた。
例会2日目は真下成彦氏(ブリヂストン)による「結晶性熱可塑性エラストマー/オイル系ゲルの研究」と題する講演で幕を開けた。偶然発見した少量の結晶性熱可塑性エラストマーと多量のオイルから構成されるゲルについて,網状相分離構造の形成機構から観察方法,工業材料への応用まで幅広く紹介された。続いて小林洋子氏(富士ゼロックス)より「近赤外分析法(定性)の工業材料への適用」の講演が行われた。近赤外分析法の簡単な原理とケモメトリックスとの結合で得られる情報についての解説の後,酸化チタン粉末表面の水酸基と熱処理温度の関係,PTFE微粒子の表面特性についての報告があった。
 本例会の締めくくりとして,初日夜に行われた分科会の報告が各分科会のコーディネーターから行われた。3つの分科会とも密度の高い議論が行われたことが伺われた。
 最後に本例会(夏期合宿)の幹事として企画運営に当られた山本清氏(旭硝子)、末友茂氏(荒川化学)、柏原督弘氏(住友スリーエム)の尽力にお礼を申し上げたい。

(潟Jネカテクノリサーチ 出口義国)




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