第347回例会報告

 4月21日、総会ならびに第347回例会が、五反田の「ゆうぽうと」開かれた。総会では2008年度の活動報告、会計報告があり、2009年度の新運営委員、活動計画および予算案が承認された。引き続いて例会に移り、講演2件、ワークショップ2件があり、いずれも活発な質疑応答がなされた。参加者は39名であった。
 最初に、櫻井愛子氏(株式会社三菱化学科学技術研究センター)より、「GPC-NMRによる機能性材料のキャラクタリゼーション」の講演があった。LC-NMR中のアプリケーションの一つであるGPC-NMRについて装置構成と原理説明があり、その装置を用いてカラーレジスト用分散剤の測定と解析例が紹介された。最適な条件で分析するために、溶媒およびGPC条件の予備検討をおこない、オンフロー法で分析を実施した例が示された。溶媒により分解能、不純物に差があり、試料の構造に対して適切な溶媒を選択する必要があること、通常のNMR測定条件とは違い、できるだけ濃い濃度の試料溶液が必要であることなどの注意点が報告された。また、得られたスペクトルを解析することによって、分子構造と分子量情報の相関が得られ、単位構造あたりの吸着量、架橋の差異等の情報が得られるため、物性との相関も考察することができると報告された。
 ワークショップ1件目は、島田治男氏(株式会社資生堂リサーチセンター)による「HPLCポストカラム誘導体化法によるCoQ10の迅速分析」であった。CoQ10は、細胞内での呼吸鎖に電子運搬体として働く補酵素である。サプリメント及び化粧品などで注目された理由として、CoQ10の抗酸化作用は抗老化と考えられ、さらに加齢に伴い減少していくといわれているためである。この物質を天然物から妨害なく測定する方法として、局方の確認試験を利用したHPLCポストカラム法を開発したという報告であった。反応により生成する青色成分の安定性を向上するための工夫、再現性のよい分析方法を確立するための検討をおこなった結果、ほとんどの試料に適用できる優れたHPLC条件が見出された。開発された分析は再現性も良好で定量方法として優れた方法であることが報告された。
 ワークショップ2件目は、東洋渡氏(王子製紙 総合研究所)による「TOF-SIMSによるパルプ樹脂成分の紙表面へのブリード現象分析」であった。紙製品には様々な種類があり、それぞれの表面物性が異なっていて、経時や製造条件によって変化することが知られている。その様な経時変化のうち、含まれている低分子量成分が表面ににじみ出てくるブリード現象の解明をおこなった例が示された。表面状態をTOF-SIMS、ESCAで分析し、成分情報を得た。ESCAによりケミカルシフトで結合情報を知ることができ、ブリード前後の表面組成変化を確認。TOF-SIMSにより得られる質量情報とを組み合わせることによって、表面主成分の変化を捉えることが可能である。さらにTOF-SIMSイメージングにより視覚的に変化を見ることができることが報告された。
 最後に、平賀良知氏(広島大学大学院理学研究科)による「赤潮プランクトンが産生する生理活性天然物の構造解析」の講演があった。地元瀬戸内海の漁業に被害をもたらした赤潮の原因である牡蠣などの二枚貝のみを生物群特異的に斃死させるプランクトン、渦鞭毛藻ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの二枚貝致死活性物質の構造及び活性発現機構の解明を目的として、糖脂質類の構造解析方法について紹介された。ヘテロカプサより細胞溶解活性を持つ化合物の抽出、単離、精製を行い、各種NMR, MSの測定結果より構造を決定していく。分子量の大きな化合物は、化合物の特性を生かして特異的な分解をおこない、低分子量の物質としてから部分構造を決める、という手段を用いている。詳細な構造を解明するためにHPLCなどの手法も取り入れ、部分構造はNMR上の性質を駆使し、分子量1000程度になると「これは簡単に決まります」と淡々と説明してくださった平賀氏のあざやかな手腕に感服した。
その後、講師を囲んでの懇親会があり、有意義でなごやかな雰囲気の中で例会を閉会した。
〔(株)コーセー 安田純子〕



All Rights Reserved, Copyright (c) 2003, THE JAPAN SOCIETY FOR ANALYTICAL CHEMISTRY