第343回例会(夏期合宿)報告

 高分子分析研究懇談会第343回例会(夏期合宿)が7月11日・12日の2日間、静岡県御殿場市の御殿場「時之栖」御殿場高原ホテルにて開催された。霞がかかっていたため、富士山を見ることがほとんど出来なかったが、蒸し暑い日々を忘れることのできる閑静なロケーションにて5件の講演と全42名の参加者による熱心な意見交換が行われた。
 本研究懇談会の運営委員長、大谷 肇氏(名古屋工業大学)による開会挨拶の後、第1セッションがスタートした。最初に寶崎 達也氏(リケンテクノス)より「SEC分析におけるポイントと問題点」と題した講演が行われた。一般的なSEC分析を中心に、SECに特殊な検出器を接続した場合や、高温SEC測定までわたった使用上の注意点について、具体例を挙げながらわかりやすい説明が行われた。講演の最後には、測定試料をフィルター処理せずに分析した際に架橋構造を観測することが出来たという貴重な分析例も紹介された。次に「極低加速電圧SEMによる材料極表面の新しい解析法」と題して橋本 哲氏(JFEテクノリサーチ)より極低加速電圧SEMと数々の検出器を組み合わせた素材表面分析を中心とした講演が行われた。数100〜30kV程度の極低加速電圧にて材料素材表面を観測することにより、チャージアップを防ぎ、素材本来の表面状態を観測することが出来るということであった。また、特徴を持った検出器を切り替えて観測することにより必要な情報を引き出すことができると言うことについて具体例を挙げながらの説明が行われた。本装置を用いた場合、空間分解能が10〜20nmまであげられるとの事であり、表面分析・解析技術の進歩を感じることが出来た。初日の最後は衣笠 晋一氏(産業技術総合研究所)より「合成高分子のMALDI-TOFMSの共同測定と信頼性」と題し、2007年4月から6月にかけて国内16機関が参加して実施されたMALDI-TOFMS共同測定結果についての報告を中心とした講演が行われた。共同測定では、平均分子量などに測定者や装置間に大きな差は見られなかったが、同じ結果であっても熟練者と測定初心者では、数値に表れない”スペクトルの質”に差があったことや、測定条件を指定していなかったため、同じ標準試料に対して、いろいろと異なった測定条件にて測定されていたと言った興味深い結果が紹介された。
 夕食後、先に行われた講師の方を中心に「A班:分離分析」「B班:形態観察」「C班:質量分析」の3分科会に分かれ、約2時間にわたって活発な議論がなされた。分科会の後、合宿恒例の懇親会が開催された。話し(お酒の?)足りないメンバーを中心とした2次会も含め深夜までさまざまな話題で盛り上がった。
 例会2日目は宮腰 哲雄氏(明治大学)から「熱分解-GC/MSを用いた漆塗膜の分析と応用」と題した講演が行われた。漆の組成が産地により異なるため、熱分解-GC/MSにより組成を解析することにより産地を推定することが可能である。これにより、輸入された漆を解析した例や、中国の漆の由来について解析した例が紹介された。乾きやすい日本の漆と乾きにくい輸入漆を混ぜて使用されていた可能性が高いと言った結果が紹介され、先人の知恵を垣間見ることが出来た。漆は、再生可能な植物資源であり、今後の研究に期待がもたれる。続いて「過酸化水素水を用いた塗膜の耐候性試験技術」と題して舘 和幸氏(豊田中央研究所)による講演が行われた。自動車用塗膜の耐久試験のひとつである耐候試験は、通常屋外暴露にて2年という期間を掛けて行われる。この屋外暴露試験を100倍の促進倍率にて再現出来る試験法の開発について、その検討過程が紹介された。実験室レベルにて実施した2種類の処理結果を組み合わせ、最終的に自動装置をくみ上げていく過程が紹介された。我々が日ごろ使用している車に使われている最新技術の一つを垣間見ることが出来、非常に興味深い内容であった。
本例会の締めくくりとして、初日夜に行われた分科会の報告がA班:右手浩一氏(徳島大学)、B班:出口義国氏(カネカテクノリサーチ)、C班:西本右子氏(神奈川大学)、海野晶浩氏(日立化成工業)から行われた。分科会では、日ごろの疑問点を中心として、積極的な情報交換がなされていたことが伝わってきた。
 いずれのセッションも興味深く充実した内容の例会であった。最後に、本例会(夏合宿)の幹事として本例会の企画運営を担当頂いた山本 清氏(旭硝子)、鶴見 浩一郎氏(BASF コーティングス ジャパン)、出口義国氏(カネカテクノリサーチ)の尽力に深謝したい。

(三菱化学科学技術研究センター 武居 尚英)


All Rights Reserved, Copyright (c) 2003, THE JAPAN SOCIETY FOR ANALYTICAL CHEMISTRY