第342回例会報告

【概要】
 5月8日、総会ならびに第342回例会が、五反田の「ゆうぽうと」開かれた。総会では2007年度の活動報告、会計報告があり、2008年度の新運営委員、活動計画および予算案が承認された。引き続いて例会に移り、講演2件、ワークショップ2件があり、いずれも活発な質疑応答がなされた。参加者は56名であった。

【講演1】
最初に、佐藤 信之氏(東レリサーチセンター)より、「MALDI-MS/MSを用いた各種工業材料の構造解析」の講演があった。まず、近年開発された衝突有機解離を行うことができるMALDI-MS/MS装置の原理説明があり、その装置を用いて界面活性剤、有機顔料、有機EL用発光層ポリマーを測定した例が紹介された。界面活性剤の測定例ではポリオキシエチレンのノニルフェニルエーテルを測定した例が示され、MS/MSスペクトルからヘキシル基、ノニルフェニルエーテル基、ポリオキシエチレンの存在が確認され、ポリオキシエチレンの分岐ノニルフェニルエーテルと推定できることが報告された。他の測定例も、フラグメントイオンのピークは構造から考えられるものであり、構造解析に有効であることが示された。しかし、MALDI-MS/MSでは質量の情報しか得られないため、MALDI-MS/MSだけで構造解析を行うのは危険であり、NMRや熱分解GCと組み合わせて使用するのがよいと報告された。

【ワークショップ1】
 ワークショップ1件目は、小田桐 佳代氏(フロンティア・ラボ)による「ポリカーボネート中の架橋剤と残留モノマーの定量分析」であった。ポリカーボネートの架橋剤として使用される1,1,1-トリス(パラ-ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)を水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)共存下の反応熱分解GC法で、ポリカーボネートを加水分解すると同時にメチル誘導体化、さらにTHPEもメチル誘導体化して定量した結果が紹介された。また、ポリカーボネート中に残存するビスフェノールAの定量方法としてトリメチルシリル(TMS)誘導体化の前処理を行った後、熱脱着GC-MSで測定する方法が紹介された。この方法ならば試料中に残存する未反応のビスフェノールAと熱脱着GCの昇温過程でポリカーボネートの熱分解により生成するビスフェノールAを識別して定量することができる。両方の分析法ともに再現性も良好で定量方法として優れた方法であることが報告された。

【ワークショップ2】
 ワークショップ2件目は、樫尾 庄一氏(UBE科学分析センター)による「SEMによる高分子材料中のカーボンナノチューブの分散状態観察」であった。カーボンナノチューブ(CNT)の観察には通常TEMが用いられるが、CNTの絡み合いは低倍率で見る必要があり、深さ方向の情報を得るためにもSEMで観察する要求がある。SEMで樹脂中に分散したCNTを観察する条件を種々検討した結果、蒸着処理を行わず、低真空二次電子検出器を使用したLV-SEMによる全体観察が有効であることが示された。また、奥行き情報を得るには右目用と左目用の角度のついた像を観察し、それを立体視することによるステレオ観察が有効であることが報告された。

【講演2】
 最後は長谷川 健氏(東工大)による「多角入射赤外分光法の原理と実際」の講演があった。多角入射分解分光(MAIRS)法の原理について説明された後、赤外領域での実際のスペクトルを示しながら分子の配向解析の例が報告された。MAIRS法では従来の透過法、反射吸収法による面内(IP)および面外(OP)スペクトルに対応したスペクトルが得られ、分子配向解析に役立つことはもちろん、IPおよびOPスペクトルのいずれも常光・仮想光の垂直透過測定というモデルで考えられているため、2つのスペクトルは基本的に共通の強度スケールをもっている。電場の自由度を考慮するとOPはIPの2倍の強度で現れることが分かる。IP、OPスペクトルのピークの強弱でその結合の振動の配向を観察でき、従来法のように金属面を避けて解析可能なことから今後は多方面での応用が期待されるとの報告があった。

【懇親会】
 その後、講師を囲んでの懇親会があり、有意義でなごやかな雰囲気の中で例会を閉会した。

[日立化成工業(株) 海野 晶浩]


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