第339回例会報告

【概要】
9月12日,第339回例会が、五反田の「ゆうぽうと」で開かれた。講演2件,ワークショップ2件があり,いずれも活発な質疑応答がなされた。参加者は32名であった。

【講演1】
最初に,山本勝宏氏(名工大)より「電子スピン共鳴法による高分子の構造と分子運動特性評価」の講演があった。まず、電子スピン共鳴法の原理説明があり,スピンラベル化法による高分子鎖の運動性を評価した例を紹介された。ラベル導入位置を自在に制御できる技術を利用し,高分子鎖内にラベルを導入したものと,末端にラベルを導入したものそれぞれのESRスペクトルの温度依存性から,末端セグメント周りの運動性転移温度(ガラス転移点に関係する)が低いことが示された。また、PS-PMAブロック共重合体のブロック内,ブロックのつなぎ目,末端にそれぞれラベルし,特定部位の運動性とミクロ相分離構造の相関を解析した例が報告された。

【ワークショップ1】
ワークショップ1件目は,押野博二氏(ポリプラスチック)による「発生ガス分析法を利用したポリマー評価方法の開発検討」であった。加熱溶融発生ガスは、プラスチックの熱安定性を評価する指標となる。温度と発生ガスの挙動を容易に解析するために、自動過熱脱着装置を用いた多段階加熱発生ガス分析法が紹介された。PBT/PET系樹脂の安定剤有無による熱安定性の差を評価した事例,シクロオレフィンポリマーの化学構造解析,分解機構の推定などの事例を,測定時の試料の溶融凝集を防ぐ工夫も含めて報告された。

【ワークショップ2】
ワークショップ2件目として,山之上巧氏(三井化学分析センター)から「感温性ポリアクリルアミド系共重合体の構造および物性」の発表があった。ポリアクリルアミド-ポリオール系共重合体のエマルジョンの粘度が加温によって上昇する。この粘度変化のメカニズムを粘弾性,H-NMR,DSC測定により解析した結果、エマルジョンの感温性は、ポリオールが脱水和して疎水会合することによりゲル構造が形成され発現するものと報告された。

【講演2】
最後は桜井伸一氏(京都工繊大)より「シンクロトロン放射光を用いたX線散乱法による高分子材料の構造解析」の演題で講演があった。結晶性の高分子やブロックコポリマーは数10ナノメーター程度の構造を形成する。その構造を定量的に解析するためには,小角X線散乱法が最適である。近年の大型シンクロトロン放射光施設を利用することにより,短時間に高精度なデータが得られるようになったことが詳細に説明され,その応用として,短時間測定を利用した紡糸過程の構造形成解析やマイクロビームを用いた単繊維の表層、内部の構造の違いを明らかにした例などが紹介された。また,ウルトラ超小角X線が将来,破壊のメカニズム解析やクレーズの構造解析に役立つ期待も述べられた。

〔東洋紡績(株) 高橋 則子〕


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