第338回例会(夏期合宿)報告



【概要】

高分子分析研究懇談会第338回例会(夏期合宿)が7月6日・7日の2日間、京都市の三井ガーデンホテル京都四条で開催された。祇園祭を控えた伝統的な雰囲気の中、興味深い講演と全46名の参加者による熱心な意見交換が終日にわたり行われた。初日の第1セッションは本研究懇談会の運営委員長、脇阪達司氏(花王)による開会挨拶でスタートした。

【講演1】
最初の講演は川畑慎一郎氏(島津製作所)による「MALDI-MSアプリケーションの進歩」と題した内容であった。MALDIイオン化についての基礎から実施時の留意点に関する解説がなされた。参加者一番の関心事である合成高分子の測定上の具体的注意点等についても分かりやすく説明していただいた。講演の最後に紹介されたイメージング質量分析については今後の発展に興味が持たれた。

【講演2】
次に「顕微赤外分光法を中心とする高分子材料の分析化学的研究」と題して西岡利勝氏(群馬大学産学連携・先端研究推進機構共同研究イノベーションセンター)によってSprig-8との共同研究と二次元相関分光法を用いた研究内容を中心とした講演が行われた。Sprig-8におけるシンクロトロン放射光を光源とした顕微赤外イメージングについて、従来の実験室系分光装置では困難であったポリマー微粒子のコモノマー濃度分布解析が可能であることが紹介された。また、二次元相関分光法のポリマーアロイ研究への応用については世界初という興味深い実証例であった。

【講演3】
初日最後は熊木治郎氏(科学技術振興機構)により「合成高分子鎖を原子間力顕微鏡で直接見る」と題して講演いただいた。高分子を文字通り一本一本の分子鎖レベルで研究した非常に分かりやすい数多くの実例が説明された。高分子鎖の基板上でのレプテーション的運動のin situ観察では、高分子鎖の運動の様子を直接動画で見ることができ、その情報量の多さに驚きを覚えた。

夕食後、「MS」「IR」「SPM」の3分科会に分かれ、講師の先生方を中心に約2時間にわたって活発な議論がなされた。分科会のあと合宿恒例の懇親会が行われ、さらに2次会も含め深夜までさまざまな話題で盛り上がった。

【講演4】
例会2日目は香川信之氏(東ソー分析センター)から「サイズ排除クロマトグラフィーを用いたポリマーの分析」と題した講演が行われた。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の原理から、分析上の利点、欠点に関する解説、様々な検出器との組合せによる各種ポリマーの分析例が紹介された。近年のSEC法の発展は著しく原理的な知識なしでも誰でも分析が行えるようになってきたが、それ故のトラブルについて注意喚起がなされた。今さらながらも分析機器への深い理解の重要性を認識させられた。

【講演5】
続いて「NMR法によるタンパク質の構造と機能(分子間相互作用)解析」と題して廣田洋氏(理化学研究所)による講演が行われた。NMR法の技術革新の現状を解説するとともに、タンパク質の立体構造解析、その立体構造解析に基く分子間相互作用解析の実例が示された。タンパク3000プロジェクトで行われた世界最大規模のNMR施設を用いた研究成果の数々は、構造ゲノム科学の世界の先端をわが国が走っていることを実感するものであった。

【分科会報告】
本例会の締めくくりとして、初日夜に行われた分科会のまとめ報告が渡辺健市氏(豊田合成)、高橋則子氏(東洋紡)、服部敏明氏(豊橋技術科学大学)から行われた。日頃感じている疑問や課題について率直な意見交換がなされて参加者には有意義な分科会であった様子がうかがわれた。また、今回の議論を契機に本懇談会内に専門部会を発足させてはという意見も出された。

いずれのセッションも興味深く充実した内容の例会であった。幹事として本例会の企画運営を担当頂いた大関博氏(旭化成)、小林瑞代氏(TRIテクノ)、海野晶浩氏(日立化成工業)の尽力に深謝したい。

[UBE科学分析センター 宮内康次]


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