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第325回高分子分析研究懇談会例会 報告


 標記例会が10月13日(水)簡易保険会館「ゆうぽうと」で開催された。講演とワークショップがそれぞれ2件あり、活発な質疑応答が行われた。参加者は約40名であった。

 最初に、東野由紀子氏(日本ペイント)より「コーティング材料の機能解析のための塗膜分析」と題しての講演があった。近年、環境保全や意匠性重視などで塗膜の機能ニーズは大きな変化を受けている。本講演では、はじめに、屋外用低汚染塗料の表面親水化メカニズムをXPSを用いて明らかにした事例が紹介された。塗膜には親水化剤としてケイ酸エステルを添加している。XPSで求めた塗膜表面構造と親水化の指標である水接触角との関係を解析することで親水化の実用的な指標との関係も明確となったことを示された。その他、自動車用塗料に要求される高意匠性塗膜の分析事例が紹介された。現在の塗装システムはウエットのまま複層膜を形成させるため混層の問題がある。塗膜の深さ方向組成分析により、樹脂、硬化剤の移行性と意匠性は高い相関があることを示された。

 続いてワークショップが行われた。1件目は、倉嶋直樹氏(財務省関税中央分析所)の「関税中央分析所における分析業務および研究について」の発表であった。税関における科学分析の必要性、中央分析所の高分子分析の研究・開発と成果、最近の取り組みなどが紹介された。研究例として“炭素・窒素安定同位体比分析による覚せい剤原料の由来について”が紹介された。この手法により由来が天然、発酵法、化学合成のいずれかを識別でき、流通ルートを推定できる。また、ゴムは無税であるがプラスチックは有税という興味深いお話も伺えた。

 ワークショップの2件目は、土屋俊雄氏(日本分析工業梶jの「アウトガス+Purge&Trap+GC/MSの装置概略と分析例」の発表であった。キューリーポイント自動P&TサンプラーJTD−505Uの主な特長は、2段スプリット方式によりカラムへのガス量を最大1/10,000まで調整でき、どのメーカーのGC、GC/MSにも取り付けられる点である。分析例として、フォトマスクからの加熱発生ガス分析、室内大気分析用標準試薬52成分の分析が紹介された。その他、フラットパネル用アウトガス捕集装置FP-9000と分析例(TFT LCD表面からの加熱発生ガス分析)、アウトガス捕集装置HM−04Uと分析例(ウエハケース包装材からの加熱発生ガス分析)が紹介された。

 最後に山本秀樹氏(関西大学)より、「高分子の溶解度パラメーター(SP値)の基礎と応用」と題して講演が行われた。物質が溶媒にどれだけ溶けやすいかということを数値化した値である溶解度パラメーター(SP値)は物質の溶解力を示す指標として使われており、本講演ではSP値の定義、SP値の計算方法が詳細に紹介された。SP値は種々の物性値から計算できるが、近年分子構造から推算する方法がいくつか提案されている。多くの高分子のSP値が高分子を構成しているモノマー(セグメント)の値から計算されており、その報告例が紹介された。SP値を計算するプログラムソフト(無料)もあるとのこと。最近の応用例には“人体のSP値とドラッグデリバリー”、“皮膚のSP値”、などもあり、幅広い分野で活用されていることも示された。

[潟uリヂストン 原田美奈子]

 

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